仮想通貨関連注目の国「マルタ共和国」とは
こんにちは!
波乗りトレーダーです。
今回は「マルタ共和国」についてです。
地中海に浮かぶ観光立国タックスヘイブンとしても注目され、 マルタ共和国(以下、マルタ)は、南ヨーロッパの共和制国家です。イギリス連邦および欧州連合(EU)の加盟国でもあります。
首都はバレッタ、公用語はマルタ語と英語、通貨はユーロ。イタリアの南に位置し、地中海のほぼ中央に浮かぶ島国です。国土面積は31m²と東京23区のおよそ半分の広さで、人口は約46万人。小型犬マルチーズ発祥の地で、その名はマルタに由来します。経済の方に目を向けてみましょう。
同国は18世紀まで綿花とたばこの栽培、産業の中心が製造業です。戦時は経済が繁栄し、1869年のスエズ運河開通後は船舶の寄港地としても賑わっていたそうです。ところが19世紀末以降は大型船が増えたことにより燃料補給の必要性が減り、マルタ経済は縮小、第二次世界大戦後は深刻な状況に陥ったといわれています。
国土が狭い島国ということもあり国内にエネルギー資源は少なく、食糧自給率も低いのです。淡水も限られ、イタリアから飲食料を輸入するほどです。欧州に近く地中海の中央に位置することから貿易を中心とした経済を形成していて、自動車の通行区分が日本と同じ左側通行であることから、右ハンドル仕様の欧州車だけでなく、日本から輸入された中古車も目立ち、対日中古車輸入や関連産業も盛んです。
観光産業にも力を入れていて、インフラ整備を推進。良質なホテルがあったり、巨額予算の外国映画の撮影を誘致している。
決して強固とは言えない経済をカバーする為、マルタでは貿易や観光に加えて金融にも注力しています。
税率が低い「タックスヘイブン」として多くの企業・資金を受け入れているのも特徴です。同国の法人税は、日本と同水準の35%だが、制度を活用することで実質的に5%ほどに抑えることができるといいます。
さらに個人に関しては、所得税が超低税率であるばかりか、キャピタルゲインは非課税で相続税・贈与税もないのです。
こういったことから近年はマルタへの移住を希望する富裕層は後を絶えず、「第二のモナコ」と呼ばれることもあります。
あるいはこういった魅力を聞きつけて、仮想通貨企業の進出も目立ちます。
大手仮想通貨取引所が本拠地をマルタへ移転
例えば、世界最大手の仮想通貨取引所として知られる「Binance(バイナンス)」は昨年、本拠地を香港からマルタへ移動しました。
この流れに乗るがごとく、同じく香港拠点の「OKEx(オーケーイーエックス)」も昨年4月に同様の発表をしました。
同社といえば、トークン間取引と先物取引を100ヵ国以上で展開しており、ビットコイン先物取引は1日に150億ドル以上を記録したこともあります。
政府が積極的に法整備を推進企業が根付く土壌を用意した、存在感のある仮想通貨取引所がマルタに注目するのは、何も低税率だけだからではないのです。
「ブロックチェーンアイランド」になることを国として掲げていて、金融サービス局(MFSA)は昨年7月仮想通貨に関する法案を提出し、可決されています。
具体的には、以下の3つです。
①仮想金融資産条例
ICOに関する条例。これにより、企業はホワイトペーパーの提示など一定の条件をクリアすることでICOを実施可能。
②マルタデジタルイノベーション局法案
法的保証など信頼性の確保を目的とした法案。
仮想通貨サービスを提供する際に登録や証明を求める法制度。
こういった法制度の枠組みが後押ししていて、仮想通貨企業の誘致に成功しているマルタ。最先端な企業が集まれば、産業振興の面でも有利ですね。
バイナンスは既にアクションを起こしていて、マルタ証券取引所の子会社や独スタートアップの「Neufund」と共同でジョイントベンチャーを立ち上げ、株式などがブロックチェーン上で取引される証券取引所の開設を推進しています。
さらにAppleの共同設立者であるスティーブ・ウォズニアック氏は、マルタに本社を構えるブロックチェーン企業の「Efforce」に投資して、共同設立者にもなってます。エネルギーを節約した人々が利益を得られる機会を提供するプラットフォームを構築するのです。
収益性の高い企業が集まれば税収面は言うまでもなく、雇用が創出されることにより国民も豊かになります。
しかもブロックチェーン企業への人材を確保する為、マルタにある大学から採用させる取り組みも始まっていて、マルタ大学では新たな教育プログラムとしてブロックチェーンを研究する学生に奨学金を支給すると発表したほどです。
いずれにしろ、企業として低税率を求めてマルタを目指すのは勿論、EU加盟国である同国でライセンスを取得すれば、EU圏内の居住者に対してサービスを提供できるので、メリットは大きいと思います。
国のインフラにブロックチェーン技術を続々と採用
ブロックチェーンアイランドを目指す取り組みは、留まることを知りません。国内教育機関が発行する卒業証書や成績証明書などにブロックチェーン技術を活用する予定で、同システムはLearning Machineと共同で運営される予定です。
企業登記や不動産賃貸契約、公共交通機関の管理システムなど、社会インフラにもブロックチェーン技術は採用される見通しです。今夏には、同国全ての賃貸契約をブロックチェーンに登録することを義務付ける法律改正案が内閣により承認されています。
このように情報の改ざんやコスト削減を目的に社会のインフラを担う部分にもブロックチェーン技術を実装し始めています。
まさに国家プロジェクトといったところ。小さい島国で資源にも乏しいだけに、賢い選択ではないでしょうか。
仮想通貨金融資産法のエージェントを承認
法制度の裏付けがあるだけに、規制にも厳格に取り組んでいます。
例えば昨年12月、マルタ規制当局は「オリジナルクリプト」と呼ばれる未認可の仮想通貨取引所に対して営業停止を命じています。仮想通貨とブロックチェーンに寛容な姿勢を示しているだけにイレギュレーションから外れた企業は徹底的に排除する意向を示したのでしょう。
また、今年4月にはMFSAが仮想通貨金融資産法に基づき、初めて14のエージェントを承認したと発表。具体名は明らかになっていませんが、今後これらエージェントはサービスプロバイダーの代理としてMFSAへの申請などを行うことができるのです。
既に顧客の事業計画の査定や適切な準備を進める段階で、適正評価や反マネーロンダリング、テロ資金対策のガイドラインを遵守しているかどうかの確認が求められます。
国を挙げて仮想通貨やブロックチェーン関連企業を呼び込み、経済の活性化に繋げようとするマルタの取り組みは、いち早く法整備を整え、方向性を明示したことは、他国でも見習うべきだと思います。
地中海に浮かぶ小国がブロックチェーンアイランドとして世界から注目される日は、遠からずやってくるに違いないと思います。
※投資は自己責任の為、当該投資における利益・損失における責任は全て本人の元にあるものとし、最終的な決定はご自身の判断(自己責任)でお願い致します。